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呼び起こすもの

こころの中の歌を呼び起こすもの。魚の化石。サーカスのポスター。団地の風呂場の窓。展望台の錆びた手摺の匂い。八重咲きの椿。動物園のペンギン。澱粉工場の水蒸気。夕日の差す土蔵の西壁。そら豆の莢の内側のふわふわ。踏絵。夜の鏡。真っ黒な車が走り去る時、巻き上げられまた散り落ちる桜の花片。
by konohana-bunko | 2012-04-14 19:16 | 空中底辺 | Comments(0)

読書の記録 弥生

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『漢字 ―生い立ちとその背景―』 白川靜 岩波新書
『さっちん』 荒木経惟 新潮社フォト・ミュゼ
『梶井基次郎』 中谷孝雄 筑摩叢書
『しろうるり』(歌集) 高橋みずほ 邑書林
『買えない味』 平松洋子 ちくま文庫
『真人生の探求』 中村天風 天風会
『怒らないこと 役立つ初期仏教法話1』 アルボムッレ・スマナサーラ サンガ新書
『ドレの神曲』 原作:ダンテ 訳・構成:谷口江里也 挿画:ギュスターヴ・ドレ 宝島社

『怒らないこと』がよかった。書いてあることも、語り口も。ぜんぜんエラそうでなくて、ユーモアがあって。 
by konohana-bunko | 2012-04-02 10:30 | 読書雑感 | Comments(3)

高橋みずほ 『しろうるり』より

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『しろうるり』より、好きな歌を引用。

靴脱いで裏ながめてる少年と椅子に腰掛けバスを待つ

雨の歩道のひとつ青栗蹴りてみる毬の先にまわりて止まる

なにかわからぬ虫を手の平で鵜chわからぬ形のままゆきぬ

逃げ惑うおたまじゃくしの猛しさに頭のゆれも尾のゆれのなか

あめんぼう水面(みなも)の底に四隅おさえた影すべらせて

黄の傘まわり緑のゆれてたたみつつ戸口につぼむ

立ち上がる波に若布も伸びあがり巻かれて走る砂の浜

思い煩うことも土平らかにして終わらんとす家の跡

カラコロと下駄の坂道おちてゆく西日のなかにカラコロ光

家影が旧道沿いに落ちるころ竿竹売りがゆるゆるとゆく

玄関の戸を開け放ち 布を裂く さき目におどる光の粒子

うさぎの耳が風をつかんで立つ日暮れ草のしずくを嗅ぎわけながら

殻を食むたびにつむじがゆれてゆったりと秋の鹿

牛と牛 小突き合う角つなげられ版画の黒の浮き立つ形

ずるずると屋根落ち軒にたれるゆきはるのしずくとなるまで の

夕暮れの幹をつかむ蝉の殻 わ れ て 声の立つ

生きている人の幅に開きいて椅子はひそかな広がりをもつ

生きてきた木目の幅をみせながらほっとりと椅子が置かれて


歌集『しろうるり』  高橋みずほ  装丁=間村俊一  邑書林(2008)



字足らずはもちろん、大きな印象のひとつ。それについで気付いたのは、一首の前半と後半で主語が変わる(ように読める)歌が時折見受けられること。それは、歌会だと「ねじれている」などと指摘されがちなところなのだけれど、集として読んでいると気にならない。むしろ、ちょっと楽しかったりする。公園の遊具、曲がりくねったトンネルをくぐり抜けて、(あれっ、こっちに出てきたのか)と思う瞬間の、あの妙な気分に似ている。

写真はあわじ花さじきにて。しばらく島の写真、続きます。
by konohana-bunko | 2012-03-26 19:03 | Comments(0)

「短歌往来」より、宮崎信義のうた

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「短歌往来」2012年3月号、「宮崎信義のうた50首抄 関アツ子選」より、宮崎信義の歌を抜き書き。



昨日まで迫撃砲(はう)を運んでゐた傷馬(うま) ぐつぐつ肉が煮え泡だつ汁とともにのみこむ  『夏雲』

これが給料―と渡した妻のひび割れた手がいつまでもやきついている  『交差路』

ゆすぶってやれゆすぶってやれ 木だって人間だって青い風が好きだ  『急行列車』

ひろい豊かな水量だ満たされぬねがいのままに川を見ている  『和風土』

家のことはほったらかしにしてウタのことばかりして―というていたそうな  『梅花忌』

静になった病室に死んだばかりの妻と残されるほの白い谷底だ

今朝脱いだパジャマが棹にゆれているひょうひょうと街を見ている  『太陽はいま』

友の五十回忌が私の五十回忌でもあるような読経がつづく  『地に長く』

山が描(か)けるか風や水が描(えが)けるかあと一日で春になる  『千年』

九十二のじいさんがスーパーへおかずを買いに出る雨が降ってきた  『山や野や川』

ここしばらくいのちが居坐っている天気予報に似ているな  『いのち』



写真は淡路島にて。
by konohana-bunko | 2012-03-22 19:11 | 読書雑感 | Comments(0)

松村由利子 『鳥女』より 

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『鳥女』より、好きな歌を引用。

みつみつと過去を抱きて太る秋くりのき栗の木なにも語るな

うす日差す水沼(みぬま)に憩うどの鳥も神を見るごと風上を向く

透きとおる鳥の魂あつめられ冬天かくも深き青なり

くりかえし繰り返す朝わたくしの死後も誰かが電車に駆け込む

地球はもうダメだと子ども言い放ち公文の算数解きにかかりぬ

女の子産まずに終わる生なるかどこか硬さの残るわが体

ああこれは本当のこと新聞の端から端まで貫く見出し

キッチンに光あふるるこの朝もどこかで女が殴られている

第三の性ある世界バクテリアのやや複雑な恋を思えり

キリギリス・イギリス・シマリス並び居て逆引辞典の楽しき夕べ

ガラス器の曇り見つけるふるさとは老いたる母に言わぬこと多し

結婚もシャッターチャンスも運次第 明日には明日の新聞が出る

IT化進む職場に3Bの鉛筆ありて木の香放てり

毎晩のように仕事の夢を見ていやだいやだと一葉も泣く

女らは鳥になりたしぬめぬめとやわきものもう産みたくなくて


歌集『鳥女』 松村由利子 本阿弥書店(2005)
by konohana-bunko | 2012-03-16 19:38 | 読書雑感 | Comments(3)

わけわからんけどすごい歌

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歌の自註を求められ、モチーフとなった状況を説明したら、がっかりされた。すまじきものは自作註。それを承知で答えたのだから、反応は何でもかまわない。しかし、人は自註に何を期待しているのだろうと考える。歌の背後の状況や動機の方が面白かったとしたら、それは歌として「未だし」ではないのか。
歌は読者に伝わるように書く。伝える中身は歌の中の状況であって、作者の身の上話では断じてない。状況が掴めようが掴めまいが、理屈が通ろうが通ろうまいが、読者が説明を求める気を失うような歌を目指す。「わけわからんけどすごい歌」にうちのめされたところから、自分は歌を書きはじめたのだから。
by konohana-bunko | 2012-02-07 09:53 | 空中底辺 | Comments(2)

読書の記録 睦月

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『それから』(歌集) 森水晶 ながらみ書房
『ペンギン日和 銀の輔町を行く』(写真集) 高野ひろし写真・文 うなぎ書房
『愛しのチロ』(写真集) 荒木経惟 平凡社(再読)
『手塚治虫短編集Ⅰ 夜よさよなら』 講談社
『ねこ ねこ こねこ』(絵本) ブルノー=ホルスト=ブルぶん ヤーヌシ=グラビアンスキーえ まえかわやすおやく 偕成社
『時代の風音』 堀田善衛 司馬遼太郎 宮崎駿 朝日文庫
『子規、最後の八年』 関川夏央 講談社
『聖三角形』 高橋睦郎 新潮社
『見せるだけで売れてしまう「事例広告」の方法』 村中明彦 ダイヤモンド社
『虹霓』(歌集) 大野ミツエ 績文堂

グラビアンスキーいいなあ。絵本ほしいほしい。
めずらしくビジネス本も読んでみた。面白かった。自分も何か試してみたい。
『子規、最後の八年』はすごくよかった。続きに『ひとびとの跫音』も読む。もう、買うてある。
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時折覗かせてもらっている、神戸・六甲山ホテルのブログに、アトリのいい写真が載っていたので、ご紹介。
http://ameblo.jp/rokkosan/entry-11151936664.html
3年前の6月頃だったか、夫と、病を養っていた夫の母と3人で車で神戸へ行き、思いつきで山道を登ってここのホテルで遅い昼食をとったことがあった。母との最後のドライブだったような気がする。ゆったりといい時間を過ごさせてもらった。
by konohana-bunko | 2012-02-04 20:24 | 読書雑感 | Comments(0)

読書の記録 2011師走

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あけましておめでとうございます。
2012年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

初詣は長谷寺へ。
舞台の手摺の台が、龍の顔みたい。



旧臘の読書記録。

『司馬遼太郎対話選集3 歴史を動かす力』 司馬遼太郎 文春文庫
『業柱抱き』 車谷長吉 新潮社
『水のゆくへ』(歌集) 黒田瞳 砂子屋書房
「舟」19号 現代短歌舟の会
『ことばの力』 川崎洋 岩波ジュニア新書
『百合オイル』(歌集) 江戸雪 砂子屋書房
『樛木』(歌集) 玉城徹 短歌新聞社文庫
『木下利玄全歌集』 五島茂編 岩波文庫

三が日にNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」第3部をまとめて見た。
で、それとつながりがあるような気分で、関川夏央の『子規、最後の八年』を読みかけている。
by konohana-bunko | 2012-01-03 22:16 | 読書雑感 | Comments(0)

読書メモ 『木下利玄全歌集』 五島茂編 岩波文庫

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天理のフジケイ堂で購入。
付箋を付けた歌を転記してみます。正しい漢字表記は正字体。変換が煩雑なため新字体で打ちます。横着してすみません。

『銀』より

いもうとの小さき歩みいそがせて千代紙かひに行く月夜かな

風絶えてくもる真昼をものうげに虻なく畑のそら豆の花

真昼野に昼顔咲けりまじ\/と待つものもなき昼顔の花

踏切をよぎれば汽車の遠ひゞきレールにきこゆ夏のさみしさ

子供の頃皿に黄を溶き藍をまぜしかのみどり色にもゆる芽のあり

みちのくの一の関より四里入りし畷に日暮れ蛍火をみる

『紅玉』

街をゆき子供の傍を通る時蜜柑の香せり冬がまた来る

ふる雨の枝葉つたひてしづくする音この森にこもれり、通る

まん\/とおもくくもれる夕べの川にぶく時なくわが前にうごく

山かひのわづかの畑のさゝげ豆畑つくり人今日は来ずけり

すゝき葉のさ青長葉のしげり葉のするどに垂れて風あらずけり

戸をしめて月をあびたる家の前を人なつかしく我はとほるも

まさやかに沈透(しづ)く小石(さゞれ)のゆら\/に見え定まらず上とほる波

夕さりの光ねむごろにあかるきににはとこの芽のよく\/あをし

がら\/を振りあきぬれば振りすさびつむりを打ちて泣きし吾子はも

『一路』より

葛飾の春田の水にあたゝかき嵐渡りて小浪よる見ゆ

大和路は田圃をひろみ夕あかるしいつまでも白き梨の花かも

着脹れて歩かされゐし女の児ぱたんと倒れその儘泣くも

太子前に電車を下りて太秦の夜寒をゆけば虫すだくなり

空の色瑠璃になごめり白梅の咲きみてる梢(うれ)の枝間々々に

一むら雲日をかげしたり土白き往還のいろ目にくらくなりつ

目路さむき冬田向こうの山もとに夕陽を浴びたる大仏殿の屋根

塔の下かわけるたゝきわが傘の雫の跡を印(いん)しけるかも

澄みくろみ冬川真水の流るゝに男洗ひおとす大根(だいこ)の土を

冬山はぬくとくもあるか裸木のしゞに枝くむ下は日だまり

牡丹花は咲き定まりて静かなり花の占めたる位置のたしかさ

地の上にてわが手ふれゐるこの欅は高みの梢(うれ)へ芽ぶきつゝあり

『みかんの木』より

なづななづな切抜き模様を地に敷きてまだき春ありこゝのところに

曼珠沙華一むら燃えて秋陽つよしそこ過ぎてゐるしづかなる径



「勧工場」とか「羅苧屋」とか、久し振りに見る古いことばが出てきた。「桑の葉」も。奈良に越して来たら近所の池の傍に一本だけ大きな桑の木があった。秋には鳥が濃い色の実を食べに来ていた。数年前道路が出来る時に伐られて、今はもうない。
by konohana-bunko | 2011-12-27 10:57 | 読書雑感 | Comments(2)

読書の記録 霜月

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『自家菜園の愉しみ』 榊莫山 角川春樹事務所 ランティエ叢書
『窮巷雑歌』(歌集) 玉城徹 不識書院
『菜の花の沖』一~六 司馬遼太郎 文春文庫
『中原淳一人形集 すぐ出来るぬいぐるみ』 中原淳一 国書刊行会
『長ぐつをはいた猫』(絵本) ハンス・フィッシャーぶん・え やがわすみこやく 福音館書店
『めめぼん』  竹内華子文 清水桜子写真 竹書房
『樛木』(歌集) 玉城徹 短歌新聞社文庫

写真、これも均一台で見つけたムーミンの絵本。英語。ページのあちこちに穴があいていて、ミイの行方を探す仕掛けになってました。絵本、楽しいナ。絵、いっぱいやし。字ィ少ないからすぐ読めるし。
by konohana-bunko | 2011-12-01 21:13 | 読書雑感 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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