黒沢組歌集 「街道」 第八号 風卵舎 2024年3月20日発行
今年の春に読んで、机の上に置いたままになっていた。
本を読んでも、手を動かさないと頭が働かない。読まなかったことと同じになってしまう。
すっかり今頃だが、好きだなと思った歌をいくつか引用させていただく。
・少女らの赤、青、黄のヘルメット春風が行く自転車が行く
横田初子 「空っていいよ」より
・鶏頭の花は重たいかぶりもの被るおんなの頭のようで
青沼ひろ子 「太陽の柚子」
・六畳の部屋に座って風の声きく夕刻はペソアの詩集
浅川洋 「東風」
・深海の魚の形のしろいくも風に喰われた頭と骨だ
榎並宏子 「喰われる」
・波を越え渡るあとりの一群のいちはいちはの体温みとむ
黒沢忍 「ああ海ね」
・手術後の夫の手握る名を呼べば握り返す手こんなに厚い
五味雅子 「ペレケの鮭」
・透きとおる肋骨樹肌に護られて良き内臓を弥勒は持てり
坂本まゆみ 「月を持つ」