横倒しのオリオン
2008年 11月 18日
息子から、「猫がもう――」という電話をもらった時、ついにこの時が来たのかと思った。それと同時に、千分の一ほど「ほっとした」とでもいうような気持ちになった。もうこれ以上、猫が痛い思いや苦しい思いもしなくていい、そういう意味で。
このように猫との別れを受け止めることができたことを、しあわせに思う。猫が時間をくれたからだ。わたしたちに寄り添い、花がだんだん枯れてゆくように、ゆっくり衰えていってくれたから。
それにしても、がっくりと力が抜けた。猫がいなくなることが、こんなに悲しいとは思わなかった。
夕方から寒気が入ってきて、急に寒くなった。夜、洗濯物を干そうとベランダに出たら、空は磨いだように真っ暗で、東の低いところに横倒しのオリオンがきらきら光っているのが見えた。窓を開けたままにしていたら、猫が大きな声で鳴きながら帰って来そうな気がした。