雲ができるまで

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美術作家・詩人の永井宏さんが亡くなったというお知らせをいただいた。
信じられない。
著書を読んだ他は、昨年数度、星ヶ丘sewing galleryでの「文章のワークショップ」で、ごく薄いご縁をいただいたに過ぎない。
それでも、どこかに穴があいてしまったような気がする。最後にお目に掛かったのは、玉造のbeyerさんでだった。ワークショップで、みんなの文章が書きあがるのを、絨毯の上に寝っ転がってにこにこしながら待って下さっていた。
自分が書いた文章を声に出して読むのは恥ずかしいと言ったら「自分の書いたものに最後まで責任を持ってあげなきゃ」と教えてくれた。「劣等感は誰にもあるんだよ。劣等感は面白がるしかないんだよ」「誰にでも文章は書けるんだよ。身の回りの小さいことをちまちま書いていくんだよ。書いているうちにだんだん書きたいことがつながって出て来るから」
早口で、たたた、と、次から次へと、ひとのこころをちょっとわくわくさせるようなことを話して下さっていた。葉山のアトリエを片付けて、たまった本を並べて古本屋というか、人が集まれる場所にしようと思うんだ、とも仰っていた。お身体の具合がよくなればまたお会い出来ると、わたしは何の疑いもなく思い込んでいた。

今頃、雲のあたりで、歌をくちずさんでおられるだろうか。
by konohana-bunko | 2011-04-14 21:51 | 日乗

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり