皇帝ダリア
2011年 12月 01日
一体何だこの花は。一度立ち止まって見上げたら、花から目が離せなくなってしまった。今までに見たこともない花。初冬の曇り空に向かってわらわらと咲き揺れている、薄桃とも薄紫ともつかぬ大輪の花。それは季節外れの七夕飾りのようで、仄かに禍々しく、見れば見るほど不安になってくるのだった。
茫然と突っ立っている私の傍を、駅へ急ぐ人が次々と通り過ぎて行く。こんなに目立つ花が咲いているのに、誰も目を上げて見ようとしない。それでますます気味が悪くなった。この世界の中で、この花のことを知らないのはわたしだけ?まさか。花がわたしを見下ろしている。すごくきれいで、いやな花だと思った。小走りで家に帰った。