うた新聞令和元年12月号を読む

高橋慎哉 「十月二十二日他」五首より、好ましいなと思った二首を引用。

・元首どもうち並びては食らふとふ献立も読みたちまち忘る

・夜の果てへ女去りゆき残り香の金木犀、銀木犀、ああ、しやらくせえ

高橋慎哉さんが誰かにしゃべっている声を聞くのが好きだ。わたしは三代さかのぼっても西の人だから、東男の語りが楽しくて仕方がない。(ああいうのが、べらんめえ調っていうのかな)とにこにこしてしまう。

永澤嘉己 「宿場野田尻」五首より、頷いた一首。

・はや贄を留めていたる甲州の空なお碧くなお碧くあり

この下句、本当にいい!晩秋から初冬の、よく晴れた空の青さ、うつくしさ。甲州の山に囲まれた空だからこそ、よけいにそれが深く碧く感じられたに違いない。

by konohana-bunko | 2019-12-09 23:30 | 読書雑感

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり