佐藤弓生歌集『モーヴ色のあめふる』(書肆侃侃房/2015年)より、好きだなと思った歌を以下引用。
・手で包むこどものあたまあたたかい種がいっぱい詰まってそうな
――「あたたかい種」って何て素敵な表現なんだろう。一度読んでしまったらこのイメージを忘れることができない。
・天は傘のやさしさにして傘の内いずこもモーヴ色のあめふる
・ふくらはぎに陽射しひくくふれてくるプラットホームもう脚ばかり
――駅という、ひたすら移動する場所の特徴を言い得て妙。
・まんまるな月ほどいては編みなおす手のやさしくてたれか死ぬ秋
・月寝(い)ねしのちの沙漠をなおゆける骨ゆらゆらと王子王女は
・座席からのぞけばのぞきかえされる夏の月夜のみじかい旅に
――鉄道の旅と読んだ。さしのぞく月の眼差しがやさしい。短夜、月光をかえす二条のレールの上を揺られてゆく旅。