『書物の敵』 ウィリアム・ブレイズ
2006年 04月 15日
読みながら「それ、罰になってへんて!」と思わずツッコミを入れてしまったのは以下のくだり。
「1439年、一生を書物の蒐集に捧げた二人のフランチェスコ会托鉢修道士が死んだ。この二人は本を負わせた二頭のロバを連れたまま、民衆の信仰どおりただちに天の裁きの場に引き出され、自らの審判を聞くことになった。天国の門の前で門番が問いかける。『いずこより来たるか。』『聖フランチェスコの修道院より参りました』と修道士たち。そこで門番は『左様か!しからば聖フランチェスコに汝らの裁きを下さしめよう』と言い、この聖人を呼び出した。彼は修道士とその積荷を一瞥し、二人が何者であるか、なぜこんなにも大量の書物を持ってきたのかを問うた。『私どもはフランチェスコ派の修道士でございます』と二人はうやうやしく答える。『僅かではございますがこの書物、新たなるイェルサレムへの奉納品にでもなればと持ちきたりました』『ならば汝ら地上に在りし時、書物の教えにあるとおり善行を積んだのであろうな?』修道士の人となりを一目で見てとった聖フランチェスコは、厳しい口調で問いただした。二人の口ごもる様子を見れば答えは明らか、聖人はただちに以下のような裁きを下した。『烏滸がましき見得に惑わされ、清貧の誓いにも反して、汝らはこの莫大な量の書物をかき集めてきた。そして書物を得たがゆえに、また得んがためにおのれの務めをなおざりにし、わが修道会の規範をも破っておる。ゆえに汝らにはかく申し渡す。地獄の業火のなか未来永劫、書を読みつづけよ。』その瞬間すさまじい轟音が大気を満たし、火の燃えさかる亀裂が口を開けたかと思うと、修道士とロバと書物とをあっという間に飲みこんでしまった。」(p50-52)
写真は、シナノキの新芽。新芽の上に小さい蜘蛛が。