『ありふれた空』抄

自転車の前と後ろに生まれざる吾子らを載せて花の下ゆく  十谷あとり

摑むのはたやすかれどもぽろぽろと転がりやすき雛あられかな

うみやまの濃きも淡きもひすいなる讃岐の国はわが父の国

リサイクルは煩雑である父を踏み母を十字にくくらねばならぬ

稲の葉のしらしら揺れてその揺れの収まりしのち風わずか吹く

さびしさの匂いがこもらないように髪はいつでも短めに切る

病葉の二つ流れに過ぎ行きてひとつ鯏となりて戻れり

やさしさに似た父の怯惰を思うとき斜めに破れるベルマーク2点

夜干した一枚のシャツ アイロンを掛けても月の匂いがとれず

死ぬ時も生まれる時もひとりだと思えば何とありふれた空
# by konohana-bunko | 2005-03-04 09:34 | 空中底辺

妖怪切抜お婆

高校生の頃学園祭で張りぼてを作ったことがあった。木の枠に濡らした新聞紙を重ね貼りして色を塗るあれ。学校の職員室から古新聞をもらって来て、さあ貼ろうと広げてみたら、新聞が穴だらけ。先生の中に一人切り抜き魔の人がいて、記事をあちこち切り抜いていたのだ。
それを思い出している現在のわたしは妖怪切抜きお婆である。うちが取っているのは読売と日経流通。。毎日継続して切っているのは長谷川櫂の四季(朝刊)と町田康の連載小説「告白」(夕刊)。それからアルバイト先で資料として使う水産関係の記事など。そしてそれらとはまた別に、息子1号のNIE用の記事も探して切る。
新聞を切るのは楽しい。でも整理するにはそれなりに手間がかかる。油断すると(そしてわたしは常に油断している)机の上にミルフィーユが出来上がる。
# by konohana-bunko | 2005-02-22 14:24 | 日乗

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり