『漢詩一日一首 春・夏』より、ほんの少し

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『漢詩一日一首 春・夏』より、ほんの少し引用。

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人生行楽在勉強  人生の行楽 勉強に在り

人生の楽しみは、「勉強」にある。この勉強は、日本語の勉強に似て、似ない。むりをすること、むりやりにでもすること。人生の楽しみは応分に、などいわず、むりやりにでも享受すべきである。

(p122 花と娘 欧陽修 の解説より)

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江畔何人初見月  江畔 何れの人か 初めて月を見し

この大川のほとりの月を、誰がはじめて見たのであろう。この大川の月は、いつはじめて人を照らしたのであろう。
悠久のむかし、太古のころ、この月をはじめて見た人、人をはじめて照らした月は、という問いかけは、平凡でない。

(p185 春江花月の夜 張若虚 の解説より)

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「江畔何人初見月」というくだりに触れて、この歌を思い出した。

・三輪山の背後より不可思議の月立てりはじめに月と呼びしひとはや  山中智恵子

# by konohana-bunko | 2024-04-29 19:23 | 読書雑感

最近読んでいる本 一海知義 『漢詩一日一首』春・夏/秋・冬

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一海知義著 『漢詩一日一首』春・夏、秋・冬(2冊組) (1976年刊/平凡社)

和歌にもおおく影響を与えている漢詩に少し触れてみたい、漢詩の入門書といったものをひとつ読んでみたいと思っていたところに、天牛書店さんで見つけて買い求めてみた。
難しさに途中で投げ出すのではないかと思っていたが、非常に読みやすく、解説も行き届いていて、手を取って案内してもらっているように楽しく読むことができた。
一海先生に漢文習いたかった。
付箋はたくさん貼ったものの今はゆっくり引用を打ち込むことができそうにない。再読、再々読の際に気に入ったものを記録したい。

余談。先日来、家人のテレビ鑑賞に相伴して中国のテレビドラマを観ている。これがまたすこぶる面白い!「兵聖(孫子兵法)」から今は「大秦賦(始皇帝天下統一)」。人間は今も昔もずっと戦争しているのだなとつくづく思い知らされる。

# by konohana-bunko | 2024-04-14 00:15 | 読書雑感

最近読んでいる本 『明石海人全歌集』 内田守人編

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『明石海人全歌集』内田守人編 短歌新聞選書 短歌新聞社(1978)

明石海人という名前は、以前から聞き覚えていたけれど、ようやく今になって読むことができた。
もっと若い、感受性がやわらかかった(かもしれない)時期に読んだ方がよかっただろうか。
でも
出会う時が来なければ出会えないし
出会った時が自分にとって読むのに一番よい時なのだろう。

『明石海人全歌集』より、以下引用。

・七寶の太花がめのあをき肌夕かげりくるしづけさを冷ゆ

・音たてて螇蚸(はたはた)ひとつ飛びにけりあれぢののぎくおどろがなかを
   あれぢののぎく に 傍点あり

・井戸端の梅の古木に干されたる飯櫃(おひつ)も見ゆれわが家の寫眞に

   ――写っているものが卑近であるほど、つらさがありありとたちのぼって伝わってくる。

・萌えいづる榁の白芽に降る雨は匂ひあたらし音(ね)のあかりつつ

   ――音までも目に捉えられたような、あるいは見えているものと聞こえているものが二重奏をしているような。

・ひとしきり跳ぶや海豚のひかりつつ朝は凪ぎたるまんまるの海

・蒼空の澄みきはまれる晝日なか光れ光れと玻璃戸をみがく

・蒼空のこんなにあをい倖をみんな跣足で跳びだせ跳びだせ

   ――この三首大好きだ。明澄な世界、生きようとする力の横溢。

・いつしかと我に似かよふ木の椅子の今朝はふてぶてと我を見据ゑぬ

   ――ふてぶてと がよいと思う。

・夕づけばしづむ遠樹の蟬の聲なにもかもしつくして死にゆくはよけむ

・ちひさなる抽斗あまたぬき竝べあれやこれやに思ひかかはる

   ――この歌好き。「思ひかかはる」がいい。

・海鳥はいまだ遊ばず朝潟にねむる小蛸は人にとられぬ

・ひやびやと霧をふふみて明けそむる蘇鉄に遠き発動船(ポンポン)のおと

   ――日日、海を見ていたのだろうか。瀬戸内の海を。

・ひたすらに待ちてかぼそき日もありぬほぐせば青き花芽ながらに

・活栓に堰きとめられし水勢のあてどもあらぬ我が忿(いか)りなり

・甘藍は鉛のごとく葉をたれぬ暮れてひさしき土のほてりに

・硝子戸はぴしんと閉まりつかの間をひろがり消えるむなしさに澄む

・夕づけば七堂伽藍灯りつつさくらひと山目をあけてねむる

甘藍の歌がとてもよいと思った。鉛の鈍い照り、重さ、土に残る日の熱。

後半、口語調だったり字余りを厭わず詠んだ歌もあった。


# by konohana-bunko | 2024-02-22 22:23 | 読書雑感

最近読んでいる本 『石本隆一全歌集』

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永田先生はよく「本を読みなさい」と言っておいでだったが、何を読めとまでは言われなかった。自分で考えて、選んで、自分で学ぶ他はない。そんな中めずらしく「あとりはこれを読んでおいた方がいい」と明確に勧められたのがこの本だった。
気になる歌をノートに写しながら読んでいたら、読み始めから1年8か月経っていた。


『石本隆一全歌集』 短歌研究社(2016)より、以下引用。

・石擲たばぴしりと割れん冬空の青さの下にわがからだあり

・水耕のサフランの芽は青みたり掌にとるこれはひとつのいのち

・ゴムまりを水に漬けむとせしときの抗いに似る眠らむとして

・めぐらせるわが垣のうちこのとしも蟇(ひき)いできたり媚ぶることなく

・風のなか椋鳥収めおえたれば欅の一樹いちはやく闇

・風化せでかなしきものは葬列を守る石獣の跪く列

・渾身の訣れをひとはするものかかなしみは常あとより育つ

・水馬(みずすまし)ひとつ来て搏つ水の膜ふかく撓みておれど破れず

・六千の鶴のねむりを地に見よと冬満月の引きあげらるる

・欠けつれど手振り見えつつ並びゆく踊る埴輪の喜びは何

・目黒不動裏の山辺に落ち葉積みぬくとくありつ昆陽の墓

# by konohana-bunko | 2024-02-11 22:58 | 読書雑感

最近読んでいる本 歌集『海と空のあいだに』 石牟礼道子

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石牟礼道子歌集『海と山のあいだに』 葦書房(1989)

半年ほど前、図書館で石牟礼道子の全詩集を見つけたので借りて読んでみた。
その続きで、歌集も読みたくなった。
以下、心に響いた歌を引用。

  友が憶えてゐてくれし十七のころの歌
ひとりごと数なき紙にいひあまりまたとじるらむ白き手帖を

ときにふと心澄ませばわが胸に燃ゆる火ありて浄き音立つ

かたぶいたトロッコの上にやつとこさ道生がのぼつたオーイと手を振る

坂を下る道生のあとをころころと山の小石がついて下るも

歌話会に行きたきばかり家事万端心がけてなほ釈然とせず

おほらかに生きゐよといふ強き声あたたかく欲し肩のあたりに

歌を詠む妻をめとれる夫の瞳に途惑ひ見ゆれわれやめがたし

無恰好な馬鈴薯をくりくりむき揃ゆるこの従順にしばらく和む

あたたかい冬の夜ふけに起き出して倖せな言葉をいつぱい書けり

焼き藁の奥に残れる燠赤し田の中の道よぎらむときに

まがり角よりくる人間をなつかしむなべてあざやかな悪相の類も

反らしたるてのひら仏像に似つ前の世より来しわがふかき飢餓

めしひたる少女がとりおとす鉄の鍋沈めば指を流るる冬の川

「道生」は息子さんの名前。
引用はしないが、若い時に自殺を図った時の歌なども、生々しいくらい率直に詠まれていた。

巻末に「あらあら覚え」と題した、著者と短歌の関わりについての文章がある。地方に暮らす、決して裕福ではない一介の主婦が、歌会に参加したいという願いを持った時、周囲はどう反応したか、制約のある環境の中でそれらをどう叶えていったかを辿ることができる。この振り返りの文章だけをとっても、この一冊を読んでよかったなと思った。

戦後食べてゆくために化粧品の行商を試してみたものの一向うまくいかずやめてしまった時、友人から言われたことば。
〈やっぱりあんたは、田んぼ道ば一人で、蝋燭の芯の灯っとるごつして、歩きよるとが似合うばい〉

# by konohana-bunko | 2024-01-06 23:25 | 読書雑感

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり